時間旅行の世紀 第一章

(4)

降り注ぐ光の向こうに・・・
はじめて Rock’n’Rollを聴いた、少年の僕がいた。

思えば、運にも恵まれていた。

少年は10代半ばでロックバンドのボーカリストとしてデビューすることになり、他の学生たちにはない大人びた雰囲気と憂いをまとい成長していった。

しかし、良いことばかりではないのが人生だ。

高校を1年で辞め、親とも疎遠になっていた少年には厳しい現実が待っていた。

デビューしたものの食べれずに・・・
18歳と嘘をついて運送屋で助手のバイトしてた時のこと。

何で免許、持ってないんだ?と同僚のオッサンに訊かれた。
プロなのに何でバイトしてんだ?とバカにされながら過ごした季節。

余裕がない時に、悪いことは続くものだ。

家賃が払えず、アパートを追い出され、ホームレスに。
実際は知人の家を泊まり歩いて、雨風はしのいでいたが・・・

ぬくぬくと親の庇護を受けて生活していたら、決して、わからない(親の)ありがたみ。

同世代にそんなこと話しても、彼らの興味は女の子とか、別なところにあって聞く耳なし。
大人に話せば、んなのアタリマエだろ?と相手にされない孤独・・・

最後は、やはり父が守ってくれた。

大検を取って、大学へ進学することを条件に生活の面倒を見てくれると言う。
数年前なら、ふざけんな!だった条件だが、窮乏生活を経た僕には渡りに船だった。

受験勉強なんて、負けたって死ぬわけじゃない。
生活や生命の心配なしに高いモチベーションで勉強できる幸せ。
あ!これ、アフガニスタンの少女、マララさんなら、わかってくれそうだな。平穏に勉学に励む、これ以上の幸せはない。

(5)

さて、そろそろ本題に入るとしよう。

2011年の春、まだ若かった父が入院することになった。

その時ですら、僕は、こう思っていた。
「神は乗り越えられる試練しか、人に与えない」

そして、降り注ぐトラブルにさえ、神のご加護を信じていた。

人生は簡単じゃない。

数多くの不条理の上に積み上げられた現実。
それと、どう向き合い、打ち負かすかが僕の人生だ。

不条理に対してさえ、アホらしいくらい楽しめる。
タフで能天気な僕がいた。

僕の父、KENZO は・・・
原子爆弾による焼け跡から復興しつつあった広島で生まれた。

彼の父(僕の祖父)は一命は取り留めたものの、重度の原爆症に悩まされていた。

そう、あのヒロシマだ。

(6)

1945年8月6日

ヒロシマに投下された原子爆弾は瞬く間に 20万人以上の命を奪い、さらに多くの人間の皮膚や髪を焼き尽くした。

KENZO(憲三)は、被爆者の父と文盲の母の間に生まれた農家の次男だ。

彼に原爆そのものについての記憶はない。
しかし、周り近所の大人たちが原爆の後遺症に苦しみ、地獄へ堕ちて行く様を横目で見ながら、少年期を過ごした。

ある日、彼は父に訊ねた。
「何でアメリカはドイツには原爆を落とさなかったの?」

父は答えた
「ドイツに落としたら人権問題になるけえ、黄色いサルを実験台にしたんじゃ」

「ワシらは人間じゃのうてサルなんかい?」

憲三の問いかけに、父は黙って空をにらんでいた。

戦後、10年が経ち「もはや戦後ではない」と日本政府が宣言しても、なお・・・
ヒロシマの街は、覚せい剤中毒者や愚連隊であふれ、後にヤクザの本拠地となり得る地盤を確実に築いていた。

憲三ら当時のヒロシマの子供たちは・・・

チョン(朝鮮人)、チャンコロ(中国人)、ロスケ(ロシア人)と言いながら・・・
旧大日本帝国の勢力下にあった国から移住してきた人々を蔑み・・・ 憎悪と暴力の中で育った。

異なる意見を持った日本人同士でも憎しみは増幅し、報復に対する報復は、やがて愚連隊を暴力団へと変貌させた。

東京ではオリンピック招致で浮かれムードになっているというのに、ヒロシマだけが未だ戦後のままであった。

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